次亜塩素酸水の安全性について <超音波加湿器によるミスト燻蒸消毒に際し>

2020/06/20

昨今、次亜塩素酸水による消毒が話題になっている中で、次亜塩素酸水噴霧気下での安全性について議論されています。
ウイルスを不活化するためには、ウイルス粒子の外膜を消毒剤が通過し、中のDNAやRNAを化学変化させる必要があります。そういう意味では、ウイルスはバクテリアよりも不活性が厄介な場合もあります。このウイルス自体、人や動物の細胞から合成されて増殖したもので、いずれもウイルス自身が作った粒子体ではないのです。ウイルスは自己で分裂増殖ができないため、生物ではありません。すべて動物の体細胞の成分で出来上がったものです。ウイルス粒子の外の膜は人細胞と同じもの。したがって、この脂質でできた膜はイオンは通過できません。次亜塩素酸水の場合、イオン型ではない次塩素酸の分子型のみがもの脂質膜を通過でき、内部のRNAやDNAに攻撃することができます。次亜塩素酸はDNAやRNA分子中のチッ素原子が好きで、ここを酸化して、自分は塩安定な塩素イオンになろうとします。これが次亜塩素酸の分子型が持つ酸化反応です。
このようなメカニズムでDNAやRNAに届いて変性させる次亜塩素酸ですが、ヒトや動物などの真核細胞は核が細胞の中心部にあるため、例え細胞の外から分子型の次亜塩素酸が入り込んだとしても、次亜塩素酸は細胞内に大量に存在するタンパク質や、mMオーダーで存在する還元型グルタチオンにより、完全に消費されてしまいます。真核細胞の中心の核まで届いで中のDNAにアタックすることはほとんど不可能です。先に細胞内(可溶性画分:サイトゾル)において反応してしまいます。
このような次亜塩素酸ですが、以前に空間除菌で話題となった二酸化塩素も同じような作用を持ちます。
 では、DNAにさえ次亜塩素酸が届かなければ安全なのでしょうか。そうとも言えません。次亜塩素酸は自分自身がDNAに化学反応を起こせなくとも、体内で通常、ラジカルと戦ってくれているペルオキシダーゼやMn-SODなどが次亜塩素酸の酸化力で傷んでしまうと、二次的に体内のラジカルが蓄積していくことが考えられます。また、細胞膜のリン脂質は酸化されると、これ自体がラジカルになり、連鎖的、継続的に細胞にダメージを与え続けます。
 こうした可能性が考えられる以上、次亜塩素酸水の安全性試験はこれらの懸念を払拭しないと、とても安全とは言えないことになります。ある特定の学者の見解をもって、民間企業がそれを根拠に安全と言い続けると、それならば安全性を示すデータを出せということになります。細胞へのダメージなど、ほんの数ヶ月でデータが出るものではありません。マウスやラットなどを長期間(1〜2年間)、次亜塩素酸水の噴霧雰囲気下で飼育し、各毒性を検証しないとわかりません。またこれをクリアしたとしても、人ではまた別の事象も発生します。例えば、気管支喘息患者の病状を悪化させないかや、炎症性肺疾患の惹起や悪化、肺気腫、肺繊維症などの発生も、実際に人によって検証しない限りは明確にならない疾患もあります。
 安全と信じるのは自由ですが、それを信じてあとで取り返しがつかないことになると、結局は被害者は厚生労働省へ責任を追及し、賠償請求することになろうかと思います。
 弊社の基本方針は、いかなる消毒剤も、人がいない環境で施し、消毒後は十分に換気して現場に立ち入ること、これを推奨いたします。方針を決定するのは組織の長ですが、次亜塩素酸水を日常的に噴霧して健康被害にあるのは作業員とか一般市民です。たとえ現在使用されている食品添加物でさえ、安全とは言い切れないところがあります。これらのことを十分に理解した上で、次亜塩素酸水の消毒へのご利用を行なっていただければと考えます。
 弊社が販売する業務用超音波加湿器(ドラゴンブリーズ)を使用した次亜塩素酸水のミスト燻蒸消毒は、人がいない場所での高濃度次亜塩素酸(200ppp~以下)によるミスト燻蒸消毒を推奨いたします。